眠り姫

ママはいつもわたしのそばで眠り姫のお話をしてくれる。

眠り姫はいつまでもいつまでも幸せに眠りましたとさー

そうして本を閉じると髪をなで、わたしにこう囁くの。

かわいいかわいいママだけの眠り姫。
いつまでもゆっくりお休み。

午後三時、いつものお医者さんと看護婦さんの足音が聞こえる。

「脳波にも異常はないし、もうとっくに目覚めていいはずなんですがね」
お医者さんがそう言うとママはこう返した。
「いいえ先生、いいんです、私、この子が生きてさえいてくれたら。見て下さいこの寝顔、なんて愛らしいのかしら。こうしてこの子の側でいつまでもお話を聞かせてあげられるなんて、本当に幸せだわ」

夜、ママはまた眠り姫を読んでくれた。

かわいい私の眠り姫、
いつまでもゆっくりお休みー

だからねわたし一生けんめい唱えるの。
わたしはかわいい眠り姫。
ママのかわいい眠り姫。
いついつまでもおやすみなさい。