尾行生活

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「尾行はガキの頃から続けてきた趣味なんだ。あんたに詮索されるようなことじゃないし、人に迷惑はかけない。彼だって俺の存在に気づいてないだろ」
「あなたはやりすぎ。鹿児島からずっと彼を尾けてきて今ここ静岡よ。私だって職務質問なら子供の頃からやってるの。普通の尾行者に声をかけるようなヘマはしない。百発百中私が声をかける奴は変なの。やりすぎなの」
「揉めないで下さいよ。僕知ってました。尾行されてること」
「嘘だろ」
「あなた気がついてたの?」
「僕大学の尾行察知部なんで」
「マジかよ。ポジションは?」
「そしらぬです。指宿大学の」
「イブ大のそしらぬかよ」
「あら私もイブ大よ。職質専攻」
「俺だけ素人で恥ずかしいよ」
「いえ。いい尾行でした」
「君のそしらぬはすごいよ」
「ふたりとも最高。私オフなのに職質しちゃった」
それから俺たちはあちこちで尾行しあい、職質しあった。
尾けられていると知らずに。
公開:20/09/11 11:06

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