殺人医師の善意と詭弁

　机に置かれた手紙に目をやる。
『あなた様の援助により、この村にも学校ができました。子供たちも喜んで勉強しております』

　同じ病院に勤める看護師を自宅に呼び、食事の後に首を締めて殺した。
　彼女の人生は幸福であったのか？　ふと思う。

　壁の額縁に目をやる。難病を患っていた少年と僕が、退院時の記念にと撮影した写真が飾られていた。

　近所の公園で遊んでいた子供を連れ帰り、大量の筋弛緩剤を注射して殺した。
　…この子の親は、息子の帰宅を永遠に待つのだろうか？

　僕は異常だ。精神に疾患があり、普通の生活を送ることも許されない…許されざる者だ。
　いや、これは詭弁だ。
　そう。僕は殺したいだけだ。殺しても殺しても、まだまだ殺し足りないだけの殺人鬼だ。

　部屋に飾られた無数の感謝状や手紙、海外の貧しい子供たちとの写真を眺める。
　僕に残された時間はいつまでだろうか？
　そんなことを思う……。