愚者の贈り物 

3
2

届いた宅急便の中身を見た由美子の頭は“?”の渦で脳貧血を起こす寸前だった。
ちょうどその時、夫が帰宅した。

「おっ、届いたか。早いけど、俺からの誕生日プレゼント。
 そのバック欲しがってただろ。
 ちゃんと買った奴でなくて悪いけど“ほとんど新品”ってことだから、勘弁な。
 会社の女の子が教えてくれたんだけど、ネットのフリマって凄いな。
 プレゼントさせてすぐに売っちゃうとか、怖いな。
 だから取引きが、匿名なのかね、売る方も買う方も。
 俺のは、なけなしの小遣いを頑張って貯めて買った奴だからな。
 おい、なんだよ、そのポカン顔。口、空いちゃってるぞ」

バックの出品者は由美子だった。
夫の給与から少しずつヘソクリを貯めて買ったものの、夫に言い出せず、使う機会もなく、フリマに出したのだ。

「そうそう、これが特にお得だったのは、内底にイニシャルが書かれてて、“Y”お前と一緒、凄いな」
その他
公開:20/09/10 11:02
更新:20/09/15 16:59

福田七生( 東京 東側 )

ルネサンス人の気質と向田邦子が好きです。

一話読み切りで、由美子と俺が登場するシリーズを続投しています。
他投稿も読んでいただけると、とても嬉しいです。
よろしくお願いします。



 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容