オーブンの魔法

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不機嫌がプシュプシュと音を立てる。
それをグイッと瓶に詰める。

頃合になったら急いで準備だ。

オリジナルの白い粉。
懐かしい味の生クリーム、牧場牛乳、はちみつを1匙、上品な白砂糖、涙ぐらいの塩、朝用マーガリン、内緒のバター…

材料がざっくり入ったボウルに先程の不機嫌を投入。
ここから力仕事で、人の背中を撫でて応援するかのようにグイグイと捏ねる。
バラバラだった中身が、もちもちのひと塊に。

不機嫌は2回程頬を膨らませて、私は毎度頬をつつく。
『せっかくのかわいい顔が台無しだ』
『そんなこと誰も言ってくれなかったもの』
『さあさ、そんなこと言わずにお化粧してあげようね』

この子は素朴な雰囲気だから、ロールパン。
丸めて、卵黄を塗ってやる。
『やだ、派手じゃない?』
『これから仕上げだ。君はとっても素敵だよ』


『このロールパン、ほんとに私の不機嫌ですか?すごく…おいしいです…』
ファンタジー
公開:20/09/09 23:20

雨森れに( 東京 )

色合いの綺麗な物語を紡ぎたい。
シーンごと切り取られた刹那。
不思議、恋愛、ファンタジー、怪談、純猥談などをチラホラと。
中身はお酒が好きなアグレッシブ。

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