時をさかのぼったその先に

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何度目かの世界大戦が終わったとき、人類は本当の意味で後悔した。
が、すでに手遅れだった。
核兵器の影響で地球はボロボロになっていた。
そんなときだからこそ、人類は初めて一つになることができたのだ。
世界中の頭脳と科学と資本を使い、タイムマシンを作る計画が進んだ。
過去に戻って戦争を止めるのだ。
やがて一機のタイムマシンが完成した。
全精力を尽くした唯一のマシンだった。
「うまくやるんだぞ」
「ああ」
一人の男が乗り込み、年代と場所を設定する。
タイムマシンが小刻みに揺れ、だんだんと姿がぼやけていく。
「頼むぞ……」

タイムトラベルは成功した。
しかし世界を変えることはできなかった。
時をさかのぼったその瞬間、座標が狂ってしまったタイムマシンはマグマのなかに突っ込み消滅してしまったのだ。
唯一の希望を失った人類はゆっくりと、確実に滅びていった。
SF
公開:20/09/09 23:08

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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