創作落語『ほめ幸兵衛』

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近頃は小言の多いふてぇ輩が“ばらえてい”番組に引っ張りだこですな。
あちこちに呼ばれて、そのうち引っ張りすぎて落っこっちまったりして。
何事もほどほどが大事で。

「なぁ、おまいさん。また追い返しちまったのかい」
「仕立て屋のやつ、息子を養子にやれねぇてんで…」
「何の話だい。たまにゃ人様をおだてて、さっさと貸家の札をはがしておくれよ」
女房には小言が言えない小心者幸兵衛。
誰振りかまわず褒める指南を受けて、なじみの魚屋に来た。

「よぉ、八っつあん。今日もおまいさんとこの魚は“粋”なもんが並んでるねぇ」
褒める幸兵衛に、豆鉄砲をくらった鳩みたいなツラした八五郎。
「なぁに馬鹿なことを言ってやがる。みんな死んでらぁ」

そこに八五郎の娘が出先から戻ってきた。
「よぉ、娘さん。浴衣も恰好よく決まって“粋”だねぇ」
「いいえ、幸兵衛さん。あたくしは今帰ったんでありんす」
その他
公開:20/09/08 18:00
更新:20/09/17 09:11
創作落語 小言幸兵衛

まのじゅん( 神戸 )

まのじゅん/間野 純
神戸市在住の26歳
執筆は2020年春ごろから

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