記憶もJ

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おそらく私はとんでもないことをした。きっと誰かを深く傷つけたはずだし、たぶんその罪は許されることはないだろう。犯した罪は忘れたけれど、その罪の抜け殻が今も背中にくっついていてかゆい。
私は罪の抜け殻に耐えきれず、一度サイフォンで蒸気になり、パイプラインで大阪を脱出することにした。
「そないときは北上やな」
JA(蒸気アテンダント)から逃亡なら北が映えるとアドバイスを受けた。
パイプラインで北上して小樽の喫茶店に滴り落ちた私は、マグカップで客の男たちに提供される。
「この胸の悲しみをどうしてくれるんだよ」
その店のカウンターには元カレだという男が7.8人待ち構えていた。
この胸の悲しみ?私はこの男たちに何をしたのだろう。
罪を忘れて、蒸気になって、不純な気持ちが抜けてクリアな味わいの私を、元カレだという男たちが飲み干していく。
8人ではない。7.8人。
「0.2は?」
「蒸発と、今トイレ」
公開:20/09/07 18:27

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