トンネル

8
7

そのトンネルを使えばすぐに目的地に着くはずだった。ところが歩いても歩いても一向に出口に辿り着かないのだ。恐らく地図アプリの間違いだろうと仕方なく歩いていたが正直言って飽き飽きしていた。

「記念に落書きでもしようぜ」
一人が言いだすと皆、思い思いに壁に落書きをした。俺は何となく鍵の先で一本の線を引いた。

更に俺たちは歩き続けたが出口は全く見えてこなかった。

「なあこのトンネル伸びてんじゃね?」
誰かがふさげてそんな事を言った。皆笑ったが、どこか薄気味悪さを感じ始めていた。

それから三十分程歩いた所で、一人が急に妙な事を言い出した。
「ねえこれ、さっきお前がつけた傷じゃないよね」
と俺の横の壁を指さす。
「まさか」
俺はそう言ったが、確かにそこにはさっき俺が鍵でつけたのとそっくりな線が後ろからずっと伸びている。まるでこのトンネルが俺たちの事をどこまでもどこまでも追いかけているみたいに。
SF
公開:20/09/07 13:47
更新:20/09/07 17:09

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容