マロニエ(マロニエシリーズ -1-)

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―林檎はポム、林檎の木はポミエ
―レモンはシトロン、レモンの木はシトロニエ
―さくらんぼはスリーズ、じゃあさくらんぼの木は?
―うーん、スリジエ?
―いとよろし。
家庭教師のアンドレと姫がフランス語を勉強している。覗き見る中納言に気づいて姫が言った。
―マロンの木はフランス語で? 
―うーん、マロニエ
パチパチパチ!拍手をもらって中納言の顔が緩む。
―麿はマロングラッセが大好きじゃ。
―でもね、マロ二エって栗の木じゃなくてとちの木よ。
―ぬぁに?辻褄があわぬ!
熱くならないで!じっくりコトコトよ、と宥める姫には聞く耳も持たず、中納言は庭へと去っていく。
様子をみようとしばらくしてから姫が小枝で刺してみると、いと柔し。小枝は中納言の体にすーっと入っていった。とその時、ミシミシ音がして、中納言の足が地面に根を張り、ワサワサと葉が茂り大きな木になった。秋晴れの日、小風にマロニエの葉が揺れている。
その他
公開:20/09/08 22:32
更新:20/09/10 01:11

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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