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毎度金なし、暇なし、無一文でござんす。先立つものなきゃままならぬ時世。質屋の暖簾を親娘がくぐります。
「いくつか買い取っていただきたく…」
「これ程で…」
算盤弾く質屋。アタシの名よりゃマシな二束三文。質屋マケたら国傾くなんて申しますが娘が泣いております。
「では、形見ですが…」
薄汚れた木彫り観音。値打ちはわからぬが、これがなかなかのご尊顔。
「値付き折半でよろしいか?」
売れた額を折半が質屋の慣し。ぬるま湯で塩、丹念に観音様を磨きますと、ご尊顔に光が差します。中からカラカラ腹ごもりでなさる。塵でもありゃいけねぇとノミで以て繋ぎを開けますと。
「小判じゃあねぇか!」
ザックザク小判がいでて質屋仰天。

「旦那、観音様のご慈悲でございます」「もらえません。」と問答の末、
「それでは娘を嫁に、結納奉ります。磨けば光る器量の娘…」
困った質屋が一言

「いやぁ、磨いてまた小判が出るといけねぇ」
その他
公開:20/09/08 20:03
習い落語 原案・井戸の茶碗 名作をしょーとおまーじゅ

伽藍堂 無一文( 寄席 )

伽藍堂無一文(がらんどうむいちもん)
しがない噺屋風情が芸の肥やしにこちらで厄介になっております。
兄さん、姐さんがた、どうぞお見知り置きを。

たまに拝読、感想を残しやすが、
江戸弁忘れた時ゃ内緒にしといてくだせぇ。

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