愛犬ピス

16
26

自分が小さい頃、ピスと言う名の犬を飼っていた。どうして家にいたのか、何犬なのか、オスかメスだったのか何も記憶が無い。元々知らなかったのかも知れない。
鎖も無く一日中あちこちを好きに走り回っていた。だから紐をつけて散歩させた記憶も無い。残ったご飯に味噌汁を掛けたのを嬉しそうに食べていた気がする。幼稚園から帰ると喜んで、どこからともなく現れしっぽを振り飛びついてきた。
一緒に遊び回るのが楽しみだった。

ある日そんなピスが土間に倒れていたが、いつの間にか敷地の片隅にある野壺の横で亡くなっていた。今思えば自分の死期を悟り、あえて不浄な場所を選んだのか。
母親が庭の片隅に穴を掘り、自分も小さなスコップで掘るのを手伝ったように思う。亡骸を穴まで縄で引きずりながら運び、弔ったが自分も上から土を被した。良く事情は分からなかったが、何故か悲しく涙が出てきて母親と一緒に手を合わせた事だけは一生忘れない。
その他
公開:20/09/08 19:53
更新:20/09/12 14:21

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容