コチョコチョコ

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会社の帰り、いつもの歩道橋の上で、ひと回りくらい年下の若い女性が泣いていた。
今こそ、コチョコチョコの出番だ。このチョコを一粒食べると、こちょこちょされたときのように、くすぐったくなってきて思わず笑ってしまうのだ。
おれはポケットを確認する。
しまった。今日はとても厳格な会議だったから、コチョコチョコではない普通のチョコしか持ち歩いていなかった。
しょうがない。ただのチョコでも。
「あの、チョコ食べますか」
女性は、きょとんとした顔でこちらを見た。
「えっと、チョコ嫌いですか」
『いえ、好きです』
「あ、よかった。ミルクとビターどっちがいいですか」
『ミルクで』
はい、と言って、おれはただのミルクチョコを女性にあげた。
『ありがとうございます』
「いえいえ」
さすがに女性は笑わなかった。
しかし、チョコの話をしている間は涙が止まっていた。
きっと、ただのチョコにも不思議なパワーがあるのだ。
その他
公開:20/09/08 20:00

日常のソクラテス( 神奈川 )

空想競技コンテスト銅メダル『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞  『ダメ人間コンテスト』
ベルモニー Presents ショートショートコンテスト入賞 『縁茶』
X (twitter):望月滋斗 (@mochizuki_short)

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