【神の図鑑】無愛のゼロ

人類史上最も読まれた本は『聖書』であるとされるが、その本は"最も読まれなかった本"であると言えるだろう。それには世界のあらゆる知識が内包されていた。"神の図鑑"それがその本の名だ。全知の書とも呼ばれるその図鑑には、破け欠けたページがあった。

とある青年・零(レイ)は万能であった。勉強もスポーツも特別努力せず一通りできた。早くに両親を事故で亡くし、宗教狂いの叔父夫婦の家で居候する境遇にも腐らず、高校に通う傍、古本屋でのアルバイトで家計を助けた。しかし、その名が示す通り、決定的に足りないものがあった。

「青年、主に欠けたものを知りたくはないか？我のしもべになれば、全て教えてやろう。」

古本屋の焼却炉で、
処分前の古本とは思えない不遜な態度で図鑑は言った。

ここから青年・レイと図鑑、"愛"を探す物語が始まる。

出会いの後、止めどなく口汚い罵声を互いに浴びせ合うのだが、それは割愛する。