1
2

「それでは競技を始めて下さい」
世界中から選抜され、会場に集まった空ソムリエ達は感じたままを言葉にした。

「ふむ、この空は生まれたばかりですね。まだまだ、青い。だが、恋をすれば頬が赤く染まるだろう」

「いえいえ、恋人に嘘がバレて青くなっているのですよ。だから、空は青いのにポツリポツリと冷や汗が落ちてきているのです。ほら、向こうを御覧なさい。暗雲が見えるでしょう。きっと、今日の夜は雷が落ちますよ」

「皆さん、若いソムリエのようですね。何も分かっていない。これは数億年物の老齢な空ですよ。空を見る時は見た目、香り、味、余韻が大事なのです。見た目は若そうに見えますが、よく見ればダメージジーンズの様に所々に傷が入っています。きっと獣や鳥に引っ掛かれたか、突かれたかしたのでしょう。味は麦を燃やした時のような焦げた香りがする流氷ですね。その証拠にこの空はキンキンに冷えています」
公開:20/09/08 03:54

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容