閉会式

世界を巻き込んだスポーツの祭典もついに本日閉会式となった。

一方、こちらでも閉会式が始まった。会場となったドームの至る所に、数にして万を超える大小のドアが開けられたまま浮いている。開いたドアの奥には、何か得体の知れない欲望や怨念が暴れる悪魔のように踊り狂っている。

僕はドームの真ん中に立っていた。ドアから沢山の声がした。

「頑張れ！」
「ちゃんとやれよ！」
「恥ずかしくないのか！」
「そんなの俺でも出来るわ」
「国の恥」

ようやく全てのドアが閉まる時だ。

僕は耳を塞いでいる手を外し、ユニフォームを脱ぎ捨てた。途端にドアの奥の感情達は色を失った。

一つ、また一つ、少しずつドアが閉まっていく。そして全てのドアが閉まった時、何もないグラウンドの中央に一人取り残された。

僕は誰にも求められていない。

そうだった。

再びアキレス腱を伸ばし、僕はあのユニフォームを着る理由を探す。