川まで300

2
3

大病のあと健康のため散歩を始めて半年。いつもの道を行くと駐車場の横に『川まで300』の看板を見つけた。
こんな所に細い道が。たまにはいいかとそちらへ向かう。木立がさわさわと揺れる。体を吹き抜けていく風が気持ちいい。だんだん足取りも軽くなる。

ずっと登っているが川なんてあるのか。そう思う間に川原に出た。
遠くで子どもたちが石積みをして遊んでいる。
川はそう深くもなく、向こう岸に渡る飛び石が見える。試しに飛んでみると、思いがけなく軽々と渡れた。散歩のおかげかな。
渡りきったところに『門まで100』
お宮かお寺か、とにかく登ってみる。
こじんまりとした山門が見える。
入り口の人影が驚いたようにこちらを見る。
「歩いてきたんですか?」
「えぇまぁ」
「それはよかった。正門だと待たされちゃいますからね。さあさあ」
案内されて門を潜る。振り返るとずいぶん下に駐車場が見えた。
倒れた私の体とともに。
ホラー
公開:20/09/06 22:43

工房ナカムラ( ちほう )

ボケ防止にショートショートを作ります

第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容