カサブタ剥がし

「ペリペリ王子」というニックネームで特に女性層から強い人気を得ていた若き日本代表のまさかの初戦敗退が決まった。
TVCMや街の広告でよく見かけた整った顔立ちの青年が悔し涙を流す瞬間を、私は自宅の居間にあるテレビの画面を通して見ていた。
瘡蓋を剥がすスピードと傷痕の芸術点で競われる「カサブタ剥がし」の世界大会、優勝を期待された若手のホープ、ペリペリ王子は傷口を小指の先で引っ掻いてしまい流血。大会規定に則り失格となってしまったのだ。
SNSでは早くも失望や非難の声が飛び交い始めている。注目され期待されていただけに反動も大きいようだった。
「ねー、王子もうネットで叩かれてるよ。これからの選手なのに、大丈夫かな…」
私が心配気にそう呟くと、台所で洗い物をしていた父が「あー、たぶん大丈夫だろ」とおざなりな返事をする。
何でよ、と理由を聞いてみるとこう答えた。
「若いうちは傷の治りも早いっていうだろ」