競技かくれんぼ

4
6

競技かくれんぼの決勝。抽選会でホームで先攻、とクジに恵まれた僕は、自宅に隠れる対戦相手を探していた。しかし、さすが昨年の王者。見つからない。カーテンの裏、クローゼット、布団の中...どこにもいない。

もう時間が...

焦る僕をよそに、タイムアップの鐘は無慈悲に鳴らされた。くそ...でも、僕も見つからなければいいのだ。

ところが、時間になっても鬼となる対戦相手が現れない。
「どうしよう」
運営が頭を悩ませていると、王者の飼い主が会釈し、一匹の猫を地面に置いた。猫が甘えた声でにぃと鳴くと、カリ、と扉を引っ掻く音が聞こえた。扉を開けると王者が口に何かを咥えていた。

「あ、それは!」

本棚の一番奥。本の表紙の裏に隠した書きかけのラブレター。なんで!

「さすがチャンピオン。自分が隠れると同時に相手の隠恋慕を見つけるとはやりますな」

睨みつける僕を尻目に、王者は雌猫に体を擦り寄せている。
その他
公開:20/09/06 21:41
空想競技

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容