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一席、お付き合い頂きたく。
江戸の粋な宵街流し、夜は短し。飲みすぎた夜、ラーメンが堪らなく旨いもんです。当時は泥棒が世を忍びやってる事も多いそうで、ひょいっと暖簾をくぐります。
「一つくれるかい?野菜マシマシにんにく…」
「なんだそりゃ、寿限無じゃないんだ」
「じゃ、らーめん一つ。」
「あいよ。」
暗がり、すぅっと一筋、湯気が立ちます。
箸割り、ずずいと一口やろうとしたところ、つい手が滑ります。
「丼ひっくり返したぁ。割れちまったよ。もう一杯頼めるかい。」
「商売あがったりだよ。今度は気をつけな。」
今度こそ。パキッと箸割りずいっと一口。
「たまげた!こりゃうめぇ!」
「うめぇうめぇ」の声につられ岡っ引きがやってきます。元来、泥棒の大将はマズいってんで店じまいを始めると
「どうしたんだい、丼割ったの怒ってんのかぃ?」
屋台引き、去り際に一言。
「いやぁ"面割れ"ちまうと商売あがったりで」
公開:20/09/06 20:50
創作落語 便乗 間野純 著「時ラーメン」より

伽藍堂 無一文( 寄席 )

伽藍堂無一文(がらんどうむいちもん)
しがない噺屋風情が芸の肥やしにこちらで厄介になっております。
兄さん、姐さんがた、どうぞお見知り置きを。

たまに拝読、感想を残しやすが、
江戸弁忘れた時ゃ内緒にしといてくだせぇ。

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