魔女の国際便

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呼び鈴が鳴った。姉が駆けて出ていく。
少しして、小さな包みを抱えた彼女がそれをじっと見たままの格好で戻ってきた。
「すごく嬉しそう」
私が言うと、彼女はどことなく幼げな笑みを零した。
「それは何なの?」
師匠からよ、と彼女は言った。一緒に部屋に来ない?

階段を上がって姉の部屋へ。最近は滅多に入ることもなくなった室内の装いは、幾分大人らしくなったみたいだった。
包みを解くと小さな黒い箱が現れた。開けるね、と彼女が言い、私も息を呑んで開封の儀を見守った。中から、小さな箒みたいなのが出てきた。
「なにこれ?」
私はいささかしょげたように言った。茶筅だ! と姉は小さく叫んだ。
訝しんでいる私に、彼女は微笑んだ。
「日本で修行していた頃ね、私が泣きつかれた後で、よく抹茶を立ててくれたのよ。混ぜ方ひとつですっかり味が変わってしまうの。不思議よ。今度、立ててあげるね」
姉の笑顔は、少し母に似ていた。
ファンタジー
公開:20/09/09 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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