虎になる夜
2
4
ササノは同級生のなかでは抜きん出て頭の良い男だった。スポーツも水泳以外は万能で顔も良かった。体育祭や文化祭、修学旅行やバレンタイン、およそ学校であるイベントで彼の話を聞かないことはなかった。
やっかみ半分「どうせ田舎の秀才。都会にはこの程度の奴ゴロゴロいるさ」と言う者もいた。その頃教科書で習った『山月記』に絡めて「ササノみたいなのが将来虎になるんだよ」とクサす奴も。
そんな言葉にもめげず、彼は難関大学に進学し、有名企業に就職した。
帰省してきたササノと飲んだ。
「店はどうだ?いいな、好きな仕事ができて」
油汚れの取れないおれの爪を見て言った。飲むピッチが早くなる。
「俺もやりたいことはあった。けどそっち方面には才能なくて」
自嘲気味に笑う。
「違うな。出来ることだけやってきたんだ」
やりたかったことは何か聞きそびれた。
おれはただ、正体もなく虎になったササノを背負い、タクシーを探した。
やっかみ半分「どうせ田舎の秀才。都会にはこの程度の奴ゴロゴロいるさ」と言う者もいた。その頃教科書で習った『山月記』に絡めて「ササノみたいなのが将来虎になるんだよ」とクサす奴も。
そんな言葉にもめげず、彼は難関大学に進学し、有名企業に就職した。
帰省してきたササノと飲んだ。
「店はどうだ?いいな、好きな仕事ができて」
油汚れの取れないおれの爪を見て言った。飲むピッチが早くなる。
「俺もやりたいことはあった。けどそっち方面には才能なくて」
自嘲気味に笑う。
「違うな。出来ることだけやってきたんだ」
やりたかったことは何か聞きそびれた。
おれはただ、正体もなく虎になったササノを背負い、タクシーを探した。
青春
公開:20/09/07 10:25
更新:20/09/07 10:36
更新:20/09/07 10:36
ボケ防止にショートショートを作ります
第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。
ログインするとコメントを投稿できます