桔梗の一筆箋

祖母の家で麦茶を飲む時のコップはいつも決まっていた。コップの１つ１つには赤やピンクや黄色などの色々な花が描かれているのだが、私のお気に入りは桔梗。星みたいなお花はかわいいし、青紫色が大人っぽくて素敵だったから。

祖母は他界し私はすっかり大人になったが、母は時々私に小包を送ってくれる。近ごろ忙しかった私は小包を置きっぱなしにしていたが、箱の方からカサカサと音がしたので見にいくと箱から桔梗が生えていた。いや、箱からではなく箱の底に残された一筆箋から。せっかくの一筆箋にも気づいてなかったんだ…私は急いでスマホを手に取り伸びた桔梗の写真を撮った。すぐに母に送ろうと思ったが、やっぱり机の方へ戻って、ノートをジョギジョキと切った。一筆箋のような長方形に。

その紙で桔梗の上をそっと撫でると、白い一筆箋に鮮やかな青紫の桔梗が咲いた。「お母さん、お元気ですか。」一筆箋にそう書いて、私は母に小包を送った。