若者のすべて

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完全に遅刻だ。
今日はこの町最後の夏祭り。汗で貼り付くシャツが気持ち悪いが、今は自転車のペダルを踏み込むことに集中する。たしか5年前も俺が遅刻したな。電車の踏切を待つ間、ふと思い出した。

華とは幼なじみで、昔から家族ぐるみで仲が良かった。成長と共に一緒に出かけることは減ったが、夏祭りだけは毎年一緒に行っている。これは家族行事みたいなものなのだ。
しかし、5年前、高校最後の夏祭りは少し違った。
祭の最後の花火が消えた後、暗闇の中でふいに華の手が触れた。暗くても分かる、華の何か言いたそうな目。俺は気付かないふりをして、花火が上がらない空を眺め続けた。

待ち合わせ場所に着くと、すぐに華を見つけた。いつもの赤い花柄の浴衣。向こうも俺に気づいて手を振る。その指にはいつもと違う指輪が光っていた。
華は来月結婚する。
胸のざわめきを無視して、華に手を振り返した。二人の花火は今年で最後になるだろう。
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公開:20/09/06 11:19
更新:20/09/06 12:35

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