レインボージュース

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路地を歩いていると急に辺りが暗くなり、上空が黒い入道雲に覆われたと思った刹那、土砂降りの雨が降ってきた。
あいにく傘を持っていなかったので慌てて近くの隠れ家的な佇まいの喫茶店に逃げ込んだ。その店名は『俄雨亭』といい、店内では激しい雨音と対照的に、ゆったりとしたリズムのジャズが流れていた。
カウンター席に腰を下ろし、メニューを眺めていると「当店お勧めレインボージュース」という活字が目に飛び込んできた。雨が早くやんでほしいと思っていたので注文することにした。
しばらくして何の変哲もないクリームソーダが運ばれてきた。ただ、よく見ればグラスの中は暗く、炭酸の泡が上から下に雨粒のように落ちていた。
喉が乾いていた俺はレインボージュースを一気に飲み干すとほんのりレモンの味がした。するとその瞬間だ。グラスの中が七色に輝き、光の帯は窓越しに空へと飛んでいった。
いつの間にか雨はやみ美しい虹が架かっていた。
その他
公開:20/09/06 07:12
入道雲 土砂降り 喫茶店 雨音 クリームソーダ 炭酸 レモン

山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育ち、大学時代は京都(御所の近く)、大学院時代は湘南(海ではなく山側)で過ごす。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年06月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。

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