アイツ

帰ったら部屋にいたんです
まさか部屋にまでは来ないだろうと思っていたんですが
どこから忍び込んだのか全く見当がつきません
鍵はしっかり閉めていました
少し様子をみようと思いました
無駄な争いはしたくなかったんです

でも突然歌いだしたんです
いや、あれは歌ではありませんね
心地よいはずのビブラートも、不快以外の何ものでもありませんでした
イラつく気持ちを逆なでするようでした

カーテンのむこうに移動したので窓をあけてあげました
自分から出ていけるようにね
私の気持ちを察したと思ったんです
でも、カーテン越しの黒いシルエットはいつまでも消えません
そしてまた部屋に戻ってきました

ぶ～～～～～ん　ぶ～ん　

ぶ～～～

もう我慢の限界でした
壁にとまってじっとした瞬間を狙い、私はアイツを叩きのめしました
最近のハエ叩きにはピンセットもついているんです
叩いた後、つまんで捨てられて便利ですね