ラブクリップ

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おれは通販で、ラブクリップというものを買った。
見た目は、文房具のクリップとまったく同じである。
しかし、これは「紙」ではなく、好きな異性の「髪」につけるのだ。
クリップをつけられた人は、クリップをつけた人のことを愛すようになり、さらにその愛は、決してバラバラにはならず一途であるらしい。

よし、今日のデートで、このクリップを彩香ちゃんのさらさらロングの黒髪につけるぞ! と、思っていたのだが。
結局、彼女の髪にクリップをつけることなく、そのまま帰宅。
今日一日、何度もつけるチャンスはあった。それなのに、おれは彼女の髪に触れる勇気がなかった。
おれは何をしているんだ。
ムシャクシャして、思わず頭を掻く。
すると、おれの襟足に、覚えのある冷たい感触が。
手に取ってそれを見る。クリップだ。
いつの間に。というか、彩香ちゃんがこれを、おれに…?
嬉しくなったおれは、再び襟足にクリップをつけ直した。
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公開:20/09/06 19:53

日常のソクラテス( 神奈川 )

空想競技コンテスト銅メダル『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞  『ダメ人間コンテスト』
ベルモニー Presents ショートショートコンテスト入賞 『縁茶』
X (twitter):望月滋斗 (@mochizuki_short)

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