空想競技

6
10

「さあ、いよいよ空想競技の最終戦が始まりました」
巨大スタジアムの中心には男が一人座っている。
頭には何本ものコードが繋がれ、目の前にはバレーボールほどの大きさのガラス玉が浮かんでいた。
「今回はどんな空想が飛び出すのでしょうか」
目を瞑り集中する男とは対照的に、ガラス玉は様々な色に変化し光を放っている。
ガラス玉が青色になったところで、彼は右手を挙げた。
もうこれで良いという合図だ。
スタジアムのモニターにはその内容が次々と映し出された。 
深緑の葉をつけた木々がそよ風に揺れ、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
画面が切り替わり、一面には青すぎるほどの海が広がっている。
水面には波ひとつ立たず、まるで静止画のようだ。
「こ、これは……」
それは何十文明も前に存在していた、実況も含め全員が見たことのない地球の姿だった。
彼は過去最高の空想を叩きだし、見事金メダルを手にすることができた。
公開:20/09/06 15:27
空想競技

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容