真夜中のスプリンター

　309号室から発報。私はスタート地点からダッシュで309号室へ向かい、やるべき事をやってスタート地点へ戻る。
　また発報。今度は314号室へダッシュ。手が足りないので応援を呼んで対処。またスタート地点へ戻る。
　間髪おかずにまた発報。310号室までダッシュ。今回の発報は誤報だと分かり、苛つきながらも多少の安堵感を覚える。
　また発報。この競技は常に緊張感と冷静さの持続を求められる。並の競技とはちょっと違うのだ。
　競技名は「看護師（夜勤の部）」。人命を取り扱うので競技なんて言ったら不謹慎かも知れないが、そうとでも言っておかなければこの仕事は続けられない。競技だから「勝ち」もあれば「負け」の時もある。負けても次の勝負は刻一刻と迫ってくる。メンタル的にへこんでいては続けられない。レジリエンスがとても重要な競技なのだ。
　さて、またナースコールが鳴った。私はまた病室へとダッシュした。