ポイズンアップル・ルーレット

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心臓が警告を鳴らす。ぬるりと這うように汗が滲む。血のように紅い林檎は、悪魔に似ていた。シャリッ、齧ると爽やかな甘みが舌先に広がる。よかった。なんとか生き延びた。

「要はくじ引きだろ?」

"7人の小人"と呼ばれる選手が、順番に林檎を食べ、毒入りなら死。生き残れば賞金1億円が支払われる。勝者はただ一人。他の"小人"全員死亡で終了だ。それがポイズンアップル・ルーレットという競技(ゲーム)だ。

「大丈夫。」

硬い握手で、励ましてくれた警官が最初に死んだ。社長も教師も、弁護士も政治家も毒に倒れた。ここで肩書きなど関係ない。

残るは、僕と殺人犯の男のみ。

「運の良いガキだ…医大生なんかに負けるかよ。」

齧った瞬間、男が苦しみだす。「そんなはず…」

これはくじ引きゲームじゃない。他を蹴落とすデスゲームだ。

男の林檎に小さな刺し穴。

隠し持った注射器を置き、僕はしばし生還の喜びに浸る。
ファンタジー
公開:20/09/05 13:28
空想競技 メルヘンシリーズ② 白雪姫モチーフ

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


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