有効期限

3
5

「本当にいいのかえ?」
「ええ」
俺は玉手箱を受け取ると、亀の背に跨った。
亀はぐんぐん上昇したが、不思議と水圧の変化は感じなかった。
「それじゃ、あっしは一度戻りますんで」
亀はそう言うと、海へ帰っていった。
乙姫に頼まれたのは城の一室を地上風にアレンジすることだった。
それなら俺の得意分野だ。溺れていたところを助けて貰ったことだし、全力でお応えしよう。とはいえ海パン一丁でウロつくわけにはいかない。俺はひとまず車に戻ることにした。
しかし、駐車場には辿り着けなかった。
そこにはすっかり変わった街並みが広がっていた。
荷物をぶら下げ、無数に飛び交うドローン。その上空を何台もの車が走っていた。
元の浜辺へ駆け戻った俺は、玉手箱を確認した。これを使えば亀が迎えに来るはず。しかし、ピカピカだった箱はボロボロに朽ちていた。
紐を解いて蓋を開けると、中に一枚の紙片が――。
『2020年〇月×日まで』
ファンタジー
公開:20/09/05 10:25

スズキリネン( 千葉 )

どうやったら面白い作品が書けるのか、日々試行錯誤中。

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