空魚掴み

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腰を深く落とし、両の腕を名一杯に広げる。
虚空を見上げてキッと睨め付ける。
そこには空魚がいる。正しくは空魚がいるものとして振る舞うことが私には求められている。
「空魚掴み」では、八メートル四方の中で、空想上の魚を捕らえる様をいかに美しくダイナミックに演じられるかを競う。
私は巨大な魚をイメージし、全身の筋肉を大きく躍動させてそれを捕らえようとする。
私が「空魚掴み」を始めたきっかけは地元の一人相撲の神事だ。精霊と相撲を取る所作で周囲を盛り上げる私はこの競技に向いていた。
巨大な空魚に引き摺られるようにコートをのたうちまわる。迫力に審査員が息を飲むのがわかる。イケる。そう思った瞬間私はコートに仰向けに倒れ込んでいた。
神事では精霊に花を持たせるのが常だ。私には自然に負け癖がついてしまっていたのだ。
空魚を掴めなかった私は失格となってしまった。金メダルは目前だったのに。逃した魚は大きかった。
ファンタジー
公開:20/09/05 22:40

エビハラ( 宮崎県 )

平成元年生まれ、最近はショートショートあまり書いていませんでした汗
ログインできてよかったぁ…

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