天狗ノ下駄合戦

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「今日も今日とて合戦じゃ!」
しとしとと小雨の降る中、天狗たちの下駄合戦が行われておった。

「次は主らの番じゃぞ」
長大な鼻に真っ赤な顔をしたその姿は、大会委員長を務める大天狗。手下のカラス天狗どもに声をかけまする。
「やーっ!」
「とーっ!」
「おりゃ!」
と、掛け声も勇ましく、足に履いたる高下駄をば勢いよく蹴り上げたが⋯⋯。
どすん、どすん、どすん!
「ふうむ、どれもこれも悪い卦じゃのう」
大天狗は不満げな様子。
「いうても一本歯、そう巧くは立ちませぬわ」
切り株に座っていた大天狗、ふんっと重い腰を持ち上げると履いていた一本歯の高下駄を、どーんと空高く蹴り上げた。
皆の衆が空を見上げておりますと、ずどぉーんと音を立てて大地が揺れた。下駄は一本歯を土に食い込ませて見事に立ち、空には青空が広がっておったそうな。

「タマゲタ⋯⋯」
大天狗は団扇を扇ぐと、ゲタゲタゲタと高らかに笑った──。
ファンタジー
公開:20/09/05 22:25
更新:20/09/06 23:38
空想競技

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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