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 もうどのくらい掘ったのだろう。自分が全部溶け出してしまうようだ。
 井戸は地下の川に辿り着くための玄関だ。まずは玄関を探しあて、流れを泳ぎ海に出ること。それがこの競技の目的だ。
 「カチ!」鈍いものに当たる音がした。ぼくの足元は次第に黒くなっていく。一心不乱で掘り進めていくと次第に辺り一面に水が溢れ出した。
 ぼくはシャベルを投げ捨て、この水の中に飛び込んだ。ぼくは流れのままに泳いだ。思ったよりも早いし冷たい。溶け出したものが全て自分の中に戻っていく気がした。
 あれからどのくらい経っただろうか。水の味が変わり、生暖かさを肌で感じた。ぼくは上へ上へと泳ぎ、水面から顔を覗かると電車の音が聞こえた。そこは、子供のときに過ごした町のそばを流れる川だった。
 もう少し泳いでいたら、海に辿り着けたのかもしれない。でも、なぜかぼくはホッとした。もう少し、この川の中を泳いでいたいそんな気持ちになった。
その他
公開:20/09/05 21:37
更新:20/09/05 21:52

なかの りんたろう( 千葉県 )

ラジオを聞いて、興味を持ちました!
どんな内容になるか、正直わかりませんがすごく楽しみです!!

よろしくお願いします(o^^o)

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