島の老人

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俺は太平洋に浮かぶ島にいる。
島には日本でいう巫女のような老婆たちが居り、俺は彼女らが年に一度行う伝統行事の取材に来ていた。
はっきりした起源は分からないが、少なくとも数千年は続いている行事だという。

「イヤーーーッ!」
老婆の一人が気合を入れ、手を頭の上でくるくると廻し始めたが、しばらくするとふぅふぅと荒い息をして崩折れた。今度は別の老婆が高台に上がり、また同じように頭上でくるくると手を廻し始める。
十名の巫女が同じ動作をやり行事は終了した。
「これは、島の安全を願う祈祷ですか?」
俺は早速、通訳を介して訊ねてみた。
老婆たちはみな訝しげな顔をしたが、通訳は「これは儀式でなく競技だ」という。
そして今年は五人の巫女が良い成績だったらしいが、これのどこが競技なのかはまるで分からなかった。

だが帰国すると、俺はある符号に気がついた。
日本には異常発生した五つの台風が近づいていたのだ──。
ミステリー・推理
公開:20/09/05 20:07
更新:20/09/06 23:38
空想競技

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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