虫系彼女

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「ごめん!寝坊した!」
デート当日。待ち合わせの時間に遅れてきた彼女が文字通り飛んで来た。
「問題ないよ。綺麗なものも見せてもらったしね」
彼女の額には光る汗。透明感のある背中の羽根も光を反射して輝いている。
僕の彼女は虫だ。虫と言っても昆虫ではない。本の虫だ。
恥ずかしそうに羽を畳む彼女に僕は「君の好きな甘い恋愛小説を書いてみたんだ」と渡す。嬉しかったのか閉じた羽がまた開いた。

公園に着くと彼女は僕の書いた小説を読み始める。彼女は読書=食事の変異人種なんだ。
僕は彼女が作ってくれたお弁当を食べ始める。
本の虫にとって料理は人が本を書くのと同じ行為だ。
人が生きるのに、本を書く必要はない。
本の虫が生きるのに、料理を作る必要はない。
趣味同士惹かれ合い、胃袋を掴まれて恋人関係に至った僕ら。
僕らは食事後、将来について話し合う。
産まれてくる子供は作家の卵か料理人の卵、どっちだろうってね。
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公開:20/09/05 18:54

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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