黒い少年

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夏の夕暮れ──。
その少年は闇のように真っ黒な体をしていた。
彼は白と黒のタイルがはめ込まれた道の、黒いところに両足を乗せて立っていた。

「おいらと勝負だ!」
きょとんとするぼくを尻目に、ポーン、ポーン、と黒いタイルだけを踏んで遊歩道のおしまいまで駆けていった。
少年は勝ち誇るように、ぼくを見て笑った。
「よおし!」
ぼくは反対に、白いタイルだけを踏んで駆け抜けた。
「アハハハ、うまい、うまい!」
「ぼくの方が早かったろ!?」
二人で何度も何度も勝負したけど、毎回、ぼくの方が素早く駆け抜けることができた。

辺りも暗くなって来た頃、通りの向こうから声が聞こえた。
「翔太、もう夕ご飯だから帰って来なさい」
「はーい⋯⋯」
白と黒のタイルを踏みしめ母さんの手を取る。薄暗がりに立つ母さんの体は、闇のように真っ黒に見えた。
「おいらの勝ちだな!」
振り返ると、少年の体は真っ白に変わっていた──。
ホラー
公開:20/09/05 18:40
更新:20/09/06 23:38
空想競技

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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