星掬い

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 夜になった。
 選手それぞれの前には浅い水槽が置いてある。
 その水槽にどれだけの水を入れるかは選手の判断に任されている。混ぜ物をしないように水は公式水しか使用できない。
 ピーッ。
 開始音に私は慌てず、水面の星影を追った。
 くっきりと浮かび上がった星に向かって、ポイを動かす。
 掬った星影を小さなバケツに入れると、より一層、明るくなった。
 金魚掬いで使用するのと同じ紙製のポイはすぐに破れる。
 慎重に滑らかに水平に掬わなくてはならない。ポイのためだけではない。水面が乱れると、星影は消えてしまう。
 すいっ。すいっ。
 掬っていくうちに、星が瞬いてはポイの穴を広げていく。
 ちらりと電光掲示板の得点表を見る。
 今の順位は二位。
 残り時間も少ない。
 得点の高い大物を掬って、逆転を狙うしかないだろう。
 私は三日月の尖った先をポイの輪でひっかけて掬った。
ファンタジー
公開:20/09/05 17:57
#空想競技2020

田辺 ふみ

名作絵画ショートショートコンテストで「復元師」が太田忠司賞を受賞しました。
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