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中国は天台山の麓、名もなき森の中へと半信半疑、だが藁にもすがる思いで、老いた男はやって来たのだった。
鬱蒼と茂る森の奥深くへ。数時間、彼は歩き続けた。
やがて目の前に、小さな池が姿を現した。美しくも、神秘的なわけでもないごく普通の池だ。落ち葉が浮かび、腐った草木が泥土に沈んでいる。
彼は聞いたとおりに、池の周りをぐるりと回ってそれを見つけた。木の杭が打ち立ててあり、鎖が繋いである。彼は池の底へと続く苔の蒸したそれを、おもむろに引いた。
ごろごろごろと音がなり、ものすごい勢いで水かさが減っていく。池はすぐ空になり、中心に大きな丸い岩が残った。
彼は近づき、何やらをつぶやいた。気づくといつからか、ふくよかな男がすぐ隣に立っていた。
「助けてくれ、金がいるんだ」彼は言った。
「良いぞ、その代わり、あとで食わせてくれよ」
男はそう言うと腹をさすって、妙な声の零れ出る布袋から、札束を取り出した。
ホラー
公開:20/09/07 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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