レインウォーク

長靴を履き、絵本の姫を彷彿とするドレス姿の乙女が『雨に唄えば』を口ずさみながら軽やかに舞う。紳士がドビュッシーの名曲「雨の庭」に合わせ優雅に雨中を闊歩した。最注目、雨の魔術師と呼ばれる青年。新進気鋭のレインウォーカー、シズク・アメミヤが「TSUNAMI」に合わせ、悲哀に満ちた恋心を見事に表現している。

レインウォークは、雨降るパリの街で選手それぞれが競技用アンブレラを使い、音楽に合わせて演技をする種目である。“美しき雨のファンタジア”と称されるその幻想的な演技は見るものを悉く虜にした。

そんな中、水たまりを踏みつけた乙女が舌打ちをする。
「おっと、これは手痛い！ドレスにシミができている！」
「芸術点に厳しい減点です！」
「紳士も転倒！革靴がアダとなったぁ！」

「優勝は…シズク・アメミヤ選手！」
優勝者インタビューで青年はこう話す。
「雨男で良かったです。思い出はいつも雨だったので…」