牛みたいな店

6
4

「それが牛みたいなの」
「柄が?」
「体が」
「そんなに大きいの?」
「そうね。柄も白黒だから牛みたいなんだけどね」
「そんなに体が大きくて柄が白黒なんだからそれは牛でしょ」
「でも店の人が猫だって言うの」
「じゃあ猫よね」
「全体的には白いんだけど所々に黒いぶちが入ってて、もぉーって鳴くの。明け方とか夕暮れに」
「やっぱ牛じゃん」
「でも野見山さんが言うのよ、猫ですって」
「野見山さんってこの店の人?」
「そう。隣のゲージに入ってる人」
「野見山さんって売りものなの?」
「俳優を目指してるんだって」
「へぇ…」
「どうすればいいかなぁ」
「何が」
「野見山さんに付き合ってくれって言われてるの」
「いい人?」
「だから言ってんじゃん。牛みたいなの。人柄が」
「…そろそろ行くね」
「えーまだ話そうよ」
その奇人ショップの店員さんは、牛みたいな困り顔で、
「野良なんですよ、その人」
と言った。
公開:20/09/04 12:13

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容