創作落語『火消し指南』

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江戸後期。町人の間では稽古事が流行っていた。
近くに指南所ができれば、習ってみたくなるのもこれまた人情。

先の火消しの三つ巴、結局派閥の大きい「め組」の勝利で幕閉じ。そこの旦那の熊さん。いい気になって『火消し指南所』てぇ書いた看板を玄関に出すと、予想以上に大盛況。これがまさに、天のお恵み。
「よっ熊さん。今日も繁盛だねぇ」
「前の大火事でちと目立っちまってね。弟子入りが多くて困るのなんの…」
「今度うちのせがれも連れてくるから。ね、ひとつ頼まれておくれよ」

そこへ、この前の坊主が勇み足でやってきた。
「あんときの坊主じゃねぇかい。よくもこの前は…」
「よくもも八雲もないよ。こんな指南所出されて、こちとら迷惑なんだよ」
「なんのことだい」
「うちのせがれが火消になりてぇて聞かねぇんだ。坊主に育てなきゃなんないのに」
「知らないねぇ」
「知らねぇことあるかい。おまいさんだろ、火付け役は」
公開:20/09/04 18:24
更新:20/09/17 09:12
創作落語 便乗 いつもすいやせん

まのじゅん( 神戸 )

まのじゅん/間野 純
神戸市在住の26歳
執筆は2020年春ごろから

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