自己溶解プログラム

定期健診の結果、自己溶解プログラムをすすめられて受けにいった。
スーツを脱いでカプセルに横になると蓋が閉まる。眩しい白さ。温かい液体が体を包み、ミルクのなかを漂う感じだ。右のこめかみから頸動脈のあたりの充填ゴムが溶けた。頸動脈からチューブが挿入される。同時に気管支から肺に向かって流体が満たされる。肺胞が溶ける感じ。さらに胃から下腹部にかけて弛緩する。肝臓から腎臓からそのあたりの臓器も軟らかくなってゆく。挿入されたチューブがずんずんと奥まで入ってゆく。溶けたものが吸い取られると思うと、入れ替わりに温かな流動体。ミルク色を眺めながら眠くなる。少し眠ったようだ。熱い流れに目が覚める。ピチピチと小魚が身体中を泳ぎまわるようだ。

翌日、オフィスで誰からも、見違えるようだ、リフレッシュしたねと言われた。そりゃそうだ。身体の中をすっかり入れ換えたのだから。今日からは気持ちを入れ換えて仕事に励もう。