創作落語『鍵問答』

6
4

えー、指でくるくると巾着を回すのは、江戸も今でも祭りではしゃぐガキぐらいなもんですが―
役人が回しているのは、壊したてホヤホヤの錠前。
その目の前には、ふんぞり返った兄貴分とびくびく肩を震わせる与太。

「よぉ、お前さん。これで何度目だい?」
「知らねえな。俺ぁあんさんの顔を見るのは初めてだからな」
「お前さん、ここらでは有名だよ。さ、盗んだ金の出所もバレてる。おとなしく吐いちまいな」
「吐くくれぇなら死んでやる」

兄貴がそういうと、すっかり怯えていたはずの与太が口を開きます。
「兄貴やい、死ぬなんて言わねぇでくだせぇ。もうこんな賭け事はきっぱりやめて、まじめに奉公しやしょう。俺ぁ、兄貴と一緒ならそれでいいのよ」

するてぇと、兄貴。さっと立ち上がって
「何言ってやがる。“掛け事”をしたのは他でもねぇ。与太、お前じゃねぇか」
公開:20/09/03 12:00
更新:20/09/17 09:11
創作落語

まのじゅん( 神戸 )

まのじゅん/間野 純
神戸市在住の26歳
執筆は2020年春ごろから

お立ち寄りいただきありがとうございます
ふらりと交流できれば幸いです

▼NOVEL DAYS
https://novel.daysneo.com/author/j_mano37/
▼入選作品
・J-WAVE SPARK×NOVELDAYS ほっこりショートコンテスト第1弾「モノのつぶやき」
 「子に捧ぐ祈り」

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容