砂漠の熱

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 肉体の呪縛から解かれた霊魂は自由に空間を飛び回れるが、次第に自我を失って宇宙の根源へ溶けてゆく。
 例えば、怨霊のような霊が長く残るというのは、ベクトルの向きが揃ってしまうような現象だと考えればいい。怨霊が消える前に似た方向性を持つ霊が集まってしまい、自我に乏しい怨念の集合体とでもいうような力場が生じてしまうのだ。
 言い換えれば、平穏な期間が続けば怨念は消えるはず。しかし、人間社会の負の部分は常にあるので、世界中に点々と負の力場が形成されているのが現実だ。

 その昔、北アフリカの砂漠で笑う霊が出るという噂があった。イタリアのテレビ局の企画で霊媒師が呼ばれたが、現場で急に笑い出して収拾がつかなくなったという。その後に霊媒師はコメディアンに転身した。
 最初に死んだのが誰なのかは不明だ。少なくとも砂漠で笑える奴なのは間違いない。それで陽気なイタリア人が集まったのだろう。
その他
公開:20/09/03 01:37

NfMM

54字に収まらなかったアイデアの捌け口。
あまり人の作品は読みませんので、悪しからず・・・

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