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一席与太話でも。
汚ぇ金でも金は金。独り占めは卑しい人の業。盗み金を持ち逃げした泥棒が宿で一人金勘定をしていると…。

「やあ、兄貴。ここだったかい。逃げ宿にしちゃいいとこじゃねぇか。」
「お前ぇ…どうしてここに…」
「どうにかこうにか、かぎつけたんだい。腕あげたろ?」
「ヤな腕だねどうも…」
「兄貴やい、置き去りは酷ぇじゃねえか」
「悪かった。この通りだ。分け前ほしいんだろ?」
「いらねぇ。」
「何?いらねぇ?」
「俺ぁ、兄貴と一緒ならそれでいいのよ」
可愛いことは言いますが、この与太公、鍵開けの腕以外てんで能無し。逃避行には向きません。泥棒は寝てる間に逃げる算段を立てます。
「冗談じゃねぇや、金持ってとんずら…」
しかし、入り口の戸が引いても押しても開きません。そのうち外から「御用だ!御用だ!」と岡っ引き。泥棒が焦っていると目を擦り子分が言います。

「言ったろ"鍵付けた"って」
公開:20/09/03 01:04
更新:20/09/03 01:06
創作落語 与太公=愚か者 岡っ引き=役人・警察

伽藍堂 無一文( 寄席 )

伽藍堂無一文(がらんどうむいちもん)
しがない噺屋風情が芸の肥やしにこちらで厄介になっております。
兄さん、姐さんがた、どうぞお見知り置きを。

たまに拝読、感想を残しやすが、
江戸弁忘れた時ゃ内緒にしといてくだせぇ。

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