若葉の頃

2
3

やっぱりこの街に来るんじゃなかった。
後悔しても遅い。だいたい私には決断力というものがないのだ。この窮状も己が招いたこと、もはや引き返すことはできない。窓の外に目をやれば車が途切れることなく流れていく。日が西に傾き始め、夜が来てしまう。まずい。
要は小さな勇気とタイミングなのだ。それはよくわかっている。なんども根気よくつきあってくれたあの人も、そう言っていたではないか。
あの辛い日々。きっとできると信じて送り出してくれた。その期待に応えられたと思っていたのに。未熟な自分が恨めしい。

車の流れが切れた。チャンスだ、アクセルを踏み、ハンドルをきり、左車線に進路変更しようとした。激しいクラクションの音。
あ、ウィンカー出し忘れた。
またしても失敗して、どうしても左車線に入れない。これだから街は嫌いだ。車線が多すぎる。左折したいのに、左折レーンに入りそびれて、いつまでたっても家に帰れない。
青春
公開:20/09/03 21:21

工房ナカムラ( ちほう )

ボケ防止にショートショートを作ります

第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容