音徒競走(おときょうそう)

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スタートライン。4本引かれたのレーンの上に僕は一人立つ。
父として夫として、家族にカッコいい所を見せてやる。
走り出した僕はレーンに現れた黒い点を踏む。ノーツと呼ばれるそれを一定の速度で走りながら踏み続ける事で会場に音楽が流れる。
速度を落とせば音楽も遅くなる。黒い点を踏めなければ音がズレる。
隣に相手がいるわけでもなく、早さを競っているわけでもない。
この競技で採点されるは基礎点、技術点、そして音楽のレベルだ。音徒競走は陸上のフィギュアスケートとも呼ばれている。
若い選手が次と高得点を出していく中、中年の僕は徐々に調子を崩していく。もうダメだ…そう思った時、妻が私の手を取った。「しっかりして!」
妻の励ましに僕は足を踏み出す。妻と手を繋ぎ、踊るようにノーツを踏んでいく。二人三脚走り切る。
ゴール後、僕と妻は大歓声に包まれた。
妻の行為は美しき音婦愛と称され、音徒競走界で語り継がれている。
公開:20/09/03 19:24

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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