ヴィンテージカーにエアコンを

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 僕らの未来に曇りが見えた時。別れの兆しが見えたとき。
 そんなとき、ヴィンテージカーに乗れば最高さ。
 けどミラーは割れ、ハンドルは外れかけ、タイヤは死んでいる。
『ドライブに行こう。海に連れて行ってあげるよ』
 キミが落ち込んでいたら。あるいはキミがひどく不安な午後を迎えていたら。
 そんなとき、ヴィンテージカーに乗れば最高さ。
 でも1kmごとにエンストするし、エアコンなんてもちろんない。
『早くこっちにおいでよ』
 パトカーのサイレンの音。ガラス越しには、怯えるキミ。僕は嬉しいことも、悲しいことも、違いが判らなくなったんだ。
 でもそんなとき、ヴィンテージカーに乗れば最高さ。
『こっちに来ないなら、僕の方からキミを迎えにいくよ」
 僕はバールを片手に、きみの家の窓をこじ開けた。逃げ惑う君の姿はとても可愛い。
 そしてあとは、ヴィンテージカーに乗れば最高さ。
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公開:20/09/03 19:07
更新:20/09/04 02:22
ヴィンテージカー エアコン 恋愛 バールを片手に

綾坂茂吉( 九州豪雨地帯 )

 長編を書く集中力がないから、短編を書いています。
 こんなひとにおすすめです。
・空いた時間にちょっとした読み物を読みたい人。
・だれかの短編を参考して、自分も短編書きたい人。
・綾坂茂吉の短編が好きな人。

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