変わった息子

私の息子は変だ。変わっている。
今年で五歳にもなる息子は、周りが電車やヒーローに夢中になっている中、一人黙々と本を読んでいるのだ。
それも大人でも読まないような難しい本を好んでいる。
外で遊ぶよう言ってみても効果はない。｢ならママがあそんできたら｣なんて、素気無く返されてしまった。
夫はこの深刻な事実にえらく楽観的で、好きなようにさせてみようとのたまっている。来年小学生にもなる息子が、本の虫になりつつある事を心配には思わないのか。夫にそう聞いてみると、｢良いじゃないか、変わっていても。普通になんの意味がある｣
小説家である夫はそう言いきり、おもむろに息子を背から抱き締めた。

｢我が子よ、もし君が誰かに変わっているね、と言われたら君は普通だね。普通だけが取り柄だね、とでも言ってやりなさい｣
夫は息子にそう言い、息子はくすぐったそうに笑った。言葉の意味を理解しているのかは分からなかった。